織部
織部(おりべ)
薯蕷
今では見られなくなりましたが、昔はどこの家庭にも炉がありました。
この時期、寒さを迎えて炉を使い始めることを「炉開き」といい、
茶の湯の世界では陰暦10月初亥の日に、
夏の風炉(ふろ)に替えて、閉ざされていた地炉(じろ)を開きます。
この炉開きの茶事には、織部と名のつくものを何か一品使う、
というのが古くからのしきたりのようになっていて、
このお菓子もよく使われています。
織部というのは、安土桃山時代の茶人・武将「古田織部重然」のことで、
織部杯、織部棚、織部床、織部窓など、
名を冠したものが多く後世に残されていますが、
最も有名なのは織部焼きでしょう。
古田織部の指導によって創始されたとされる焼き物で、
形や文様など意匠の斬新さで知られています。
この織部焼き特有の釉、深緑を配して、
井桁・梅鉢・垣根などの焼印を押したのが、織部饅頭です。
このお菓子を作り始めることによって、
もうすぐ冬がくるということを、毎年、菓子職人は実感するのです。

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