緑風
緑風(りょくふう)
鮮羹
見てわかるとおり、このお菓子は水を表しています。
なのに、菓名は風の名前。
一見すると的外れなようですが、
あえて菓名と意匠の間に幅を持たせることによって、
お菓子に奥行きと背景を付加することができます。
緑風とは、青葉を吹き渡る初夏の風のことで、
一陣の風が若楓の葉を一枚、水面にそっと落とし、
静けさの中に広がる僅かな水の動きを表現したのが、
この緑風というお菓子です。
見たとおりの名前にするのに比べ、
季節、風の薫り、揺れる小枝、舞い落ちる葉の動き、
命のはかなさ、静寂、空気と水の温度差等々、
様々なことに想いを馳せることができます。
もちろん、見たまま、そのものずばりの名前を用いることも多く、
それはそれで非常にわかりやすくて良いのですが、
時には、こういう物語性を持った、
意味の深い菓名も良いのではないでしょうか。

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