春の宵
春の宵(はるのよい)
煉切
春宵一刻値千金(しゅんしょういっこくあたいせんきん)という言葉があります。
昔の中国・宋の文人、蘇軾(そしょく)の「春夜詩」にある一節、
「春宵一刻直千金、花有清香月有陰」からの引用で、
花は香り、月は朧(おぼろ)、春の宵は真に情趣があり、
一刻が千金にも値する素晴らしい心地である、という意味です。
また、大切な時や楽しい時、美しい時が、
早く過ぎてしまうのを惜しむ気持ちも含まれています。
春は、日が落ちるとたちまち夜となってしまう秋とは違い、
日が暮れてもしばらくの間、どこかなまめかしく、
何となく心を誘われ、そぞろ歩きをしたい気分になります。
その、暮れから夜への移ろいの一刻を切り取って、お菓子にしました。
月明かりの夜空と桜の花が、混ざり溶け込んでいく様子を、
あえて形は単純に、微妙な色のぼかしだけで表現しています。
静寂、深遠、優艶、幽玄、幻想的、神秘的…。
じっと見ていると、様々な言葉が浮かんできますね。

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